ボランティア関連ニュース(外部記事):詳細

  • 環境・動物愛護
  • 地域活性・まちづくり・観光
  • スポーツ

大使が絶賛「一番美しい自然感じる」 茨城県北ロングトレイルを歩く

2023.05.19
 新緑がきれいでアウトドアに最適な季節になった。趣味の登山に久しぶりに出かけてみよう。思いついたのが、前から気になっていた「茨城県北ロングトレイル」。その仕掛け人と一緒に歩いてみた。
 茨城県が整備を進める県北ロングトレイルは、6市町(北茨城、高萩、日立、常陸太田、常陸大宮、大子)の豊かな自然と里山や観光地を歩きながら楽しめる。既存の登山道や廃道を再整備したり、新コースを開拓したりして、2026年度以降に全長320キロのコースを完成させる計画だ。現在は105キロ分のコースが完成している。
 仕掛け人はプロジェクト代表の和田幾久郎さん(55)だ。アウトドア用品販売会社「ナムチェバザール」(水戸市)の社長で、県から委託を受け、ボランティアらと定期的に整備を進めている。
 5月11日朝、高萩市の土岳(標高約600メートル)のふもとで和田さんと合流し、同行してもらった。今回のコースは既存の登山道。歩き始めると杉林が続き、木漏れ日を浴びながら、小鳥のさえずりを聞いているだけで癒やされた。
 標高が上がり始めると杉は目立たなくなり、原生林に変わっていく。途中大きな岩が多く、急勾配もあった。飲み会や不規則な生活のせいか、登山に多少自信があったが、ひざを上げるのがしんどくなり、座って休憩を取った。
 息を整えながら見上げると、和田さんは全く息も乱さず立っている。聞くと、13年、欧州アルプス最高峰モンブラン周辺の山岳地帯の山道を走り抜ける競技トレイルランニングで、約170キロを眠らず43時間以内に完走した経験があるという。
 5分ほど休み、また歩き始めた。標高がそれほど高くなく、手軽に登れて自然を感じられるこうした登山道が茨城県北地域には、たくさんあるという。和田さんは「どこにでもある山と捉えるのではなく、国道に近く、すぐ登りに来られる里山の価値を再定義することが大事」と話す。
 山頂には約1時間で着いた。さらに展望台に上ると、360度見渡すことができた。太平洋も見える眺望が素晴らしく、風も心地いい。もっと空気が澄んでいる日には富士山も見えるという。
 このロングトレイルには海外の視線も集まりつつある。和田さんによると、世界的に有名な「ヨルダントレイル」の立役者で、ヨルダンのリーナ・アンナーブ駐日大使(56)も、よく訪れているという。
 アンナーブ大使は5月16日に大井川和彦知事らと公式行事としてロングトレイルを歩いた。「日本でのこれまでの経験の中で、一番美しい自然を感じるハイキングだった」とコメントした。
 「東京から気軽に来られて、いろんなコースがある。日本の里山を存分に味わえる」と和田さんは言う。
 山頂は通信圏外だった。和田さんによると、通信圏外の環境に行くことに価値を見いだすのは世界的な傾向だという。記者も社用スマートフォンが圏外だと、すっきりした気分になった。
 さらに進むと奇岩が多いエリアがあると聞き、クジラのように見える岩があるところまで進み下山した。「想像以上に観光地としての可能性がある」。歩き終えて、記者はそう感じた。(張守男)