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「ロケのまち 旭」 誘致1年活動PR

2023.05.22
 ドラマや映画のロケを誘致して地域振興につなげようと、千葉県旭市が「ロケのまち旭」に取り組んで1年。特産の豚肉は人気ドラマ「孤独のグルメ」でも取り上げられ、各地から人が集まる。放送されたドラマのポスターや台本をそろえた展示会が15日から始まった。市民も効果を実感する中、さらなる誘致を目指す。
 旭市役所1階の展示場には、昨年12月に放送されたテレビ東京の「孤独のグルメ」のポスターや台本、昨年10月から放送されたTBSのドラマ「君の花になる」でヒロインを演じた本田翼さんらのサインや、ロケが行われた市立飯岡中学校の写真が並ぶ。展示会は6月30日まで。
 昨年度は、18の番組で飯岡灯台や市役所などで撮影が行われた。ロケ地と作品を紹介するロケ地マップも作成した。
 市は昨年7月、市の認知度を上げ、訪れる人を増やし、市内経済を活性化させる目的で、「あさひロケーションサービス協議会」を発足させた。「旭ってどこにあるの?」と聞かれ、「銚子の隣」と答えるしかない認知度の低さが一因だった。市観光物産協会、市商工会などと官民一体で取り組みを進めてきた。
 俳優やスタッフらの宿泊や弁当の手配などを支援する「旭おっぺし隊」もできた。「押す」の意味だ。約30人の市民がボランティアで参加する。雑貨店を経営する隊長の石毛直夫(ただお)さん(49)は店舗を撮影場所として提供もしている。「旭の魅力を知ってもらい、将来的には移住にまでつながれば」と期待する。
 観光物産協会の水野竜也事務局長は、ロケ地を観光資源として活用し、地域活性化に取り組む一般社団法人ロケツーリズム協議会(東京)のセミナーに参加。県内の先進地に行って取り組みを参考にしてきた。「成果も少しずつ出てきた。活動を市民に知ってもらい、自分たちの街を自慢できるようになってくれれば成果の一つになる」と話している。
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 「孤独のグルメ」で取り上げられたのが、JR旭駅近くのレストラン「バイキング」だ。今年で開業50年。主人公の井之頭五郎(俳優・松重豊さん)が、わさびがたっぷり乗った「塩わさびの豚ロースソテー」を食べた。地元の「いも豚」を使い、1人前は厚さ約5センチ、約350グラム。シェフの川井伸さん(72)は「肉が甘くて、お客さんは厚さにも驚く」と言う。
 市は豚の生産額全国2位。市の担当者から趣旨を聞いて、「大好きな旭のためになるなら」と出演を決めた。同品種の「いも豚」は放送後、市のふるさと納税の返礼品になった。
 川井さんは、街を歩く松重さんの姿をテレビで見て「(地域が)こんなに寂しくなっているんだ」と改めて感じた。放送後、首都圏はもちろん、北海道からの旅の途中で寄ってくれた客もいる。「旭の魅力が伝わって街に来る人が増えてくれれば」と、ロケの効果に期待する。
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 千葉県内は海や山があり、都心に近いことからロケ地としての需要は高く、誘致に積極的な自治体も多い。
 昨年10月から日本テレビで放送されたドラマ「ファーストペンギン!」は、千葉県いすみ市でロケが行われた。漁師を束ねる女性の話で実際の舞台は山口県だが、いすみ市の漁港などで撮影が行われた。映画「万引き家族」も市内でロケが行われた。
 同市は8年前からエキストラになれる人のリストを作り、人材面でも制作を支援する。広報誌に毎月、募集を出し、QRコードで登録できるようにしている。約300人が登録済みだ。募集があるとメールで伝える。
 さかなクンの自伝が原作で昨秋上映された映画「さかなのこ」は、さかなクンが住む千葉県館山市でもロケが行われた。公開前の昨年8月末、市民を対象に特別上映会が開かれた。担当者は「市民への大きなPRになった」と振り返る。
 ロケツーリズム協議会の藤崎慎一会長は「大事なのはロケを誘致した後、それをどう市民に伝え、地域の文化遺産として誇りに思ってもらい、聖地にしていくか。住民やさまざまな団体が継続してやっていけるかが重要になってくる」と話した。(大久保泰)