ボランティア関連ニュース(外部記事):詳細

  • スポーツ

試合は見られないけれど…J2岡山を支える75歳を突き動かした感激

2022.11.20
 サッカーのクラブチーム・ファジアーノ岡山がJ2に加盟した2009年から、田辺直幸さん(75)はボランティアスタッフとして支えてきた。ホームゲームで観客を誘導したり、街頭でチラシを配ったり。スタジアムで声援を送ることはできないが、「12番目の選手」としてすべての関係者に知られる存在だ。
 大阪の化学工場で働いてきた。いずれ妻の故郷の岡山で余生を送ることを考えていたが、08年にクラブがJFLからJ2昇格を決めた時の興奮が、第二の人生の扉を開けた。当時60歳。会社からの雇用延長の求めを断り、岡山に移り住んだ。
 「Jチームの運営が大変なことは分かっていましたから」。チーム史上最高の3位の好成績を収めた今季までの14シーズンで、ホームゲームは293試合。うち291試合を裏方として支えてきた。
 「岡山でチームを支える決断をしなければ、つまらない人生だったと思う。ファジアーノが地域に定着したことで、私自身、楽しく活動できています」
 ボランティアスタッフの登録者は10~70代の約160人。チケットや手荷物のチェック、配布物の手渡しのほか街頭でのPRチラシ配りなど、クラブにとって不可欠の存在だ。
 試合の4時間前にはシティライトスタジアム(岡山市北区)に集まる。フロントスタッフらと役割を分担し、入場ゲートなど各所に分かれて準備を始める。来場者の流れが落ち着いても、持ち場を無人にはできない。交代で休憩はするが、試合を見ることはない。
 「スタジアムの雰囲気は外でも味わえます。試合は帰宅して動画配信アプリで見ます。負けたらハイライトで済ませますけど。もはや生活の一部」と笑う。
 今季はJ1昇格をあと一歩のところで逃した。今やJ2入りが決まった08年当時を知る人は、クラブ内にも役員を含め数人にすぎない。
 「若いフロントスタッフに、『あの感激』を味わわせたかった。ただ、ショックはありません。一歩一歩進むしかないんだから」。言葉の端々から、精神の充実ぶりが伝わってくる。
 ボランティアスタッフには自分より高齢の人もいる。社会人や学生も含め、それぞれの体調や生活と折り合いをつけ、できる範囲でチームを支えている。
 「若い人たちに、もっと加わってもらいたい。私も体力の続く限り活動を続けます」
 そんな熱意が岡山に満ちたら、「あの感激」を味わえる日は必ず来そうだ。(原口晋也)