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ランニングや犬の散歩 「ながら見守り」で地域も安心

掲載日:2022.11.30

日々の習慣にプラス、「ながら見守り」のすすめ

突然ですが、ランニングや犬の散歩を習慣にしている方はいらっしゃいますか?ランニングや犬の散歩も、「見守り」を加えることで、防犯活動に生まれ変わります。

地域では、行政や警察に加え、町会・自治会などが防犯活動を行っています。しかし、働き盛りの世代は仕事や家事で忙しく、決まった日時に集まるのはなかなか難しいため、活動メンバーの高齢化、担い手不足という課題を抱えていました。

そこで、東京都では2021年度から「ながら見守り」を奨励する事業をスタートしました。具体的には、走りながら街を見守る「RUNandSAFETY(ランアンドセーフティー)」と、犬の散歩をしながら街を見守る「わんわんパトロール」の2つです 。日々の習慣のついでに地域を見守るだけなので、誰でも気軽に参加しやすく、好きな時にできるのが特長です。
実際にどんな活動をしているのでしょうか。ランニングしながら街を見守る「パトラン東京」と、わんわんパトロールに取り組む「東京犬猫日和」を取材しました。

「パトロール」×「ランニング」で街を見守る「パトラン東京」

午前8時50分。城東警察署(江東区)の前に、軽装の男女が集まってきました。彼らが着ているのは、遠くからでも目立つ真っ赤なシャツ。胸には「パトラン」と書かれています。

パトランとは、「防犯パトロール」と「ランニング」を掛け合わせた造語。2012年に福岡県でランナーたちが始めた活動が、全国に広がりました。東京では2019年に結成した「パトラン東京」のメンバー約90人が、ランニングやウォーキングをしながらパトロールを行っています。今回は、江東区で活動するメンバーの活動を取材しました。

準備体操をして、ランニングの班とウォーキングの班に分かれてスタート。ランニングの班は、2人以上で走る場合、すれ違う人の目を見ながら笑顔であいさつするのが基本。地域のコミュニケーション向上に貢献するだけでなく、犯罪を目論んでいる人を思いとどまらせる効果にもつながります。

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地域の方から声をかけられあいさつするメンバーたち

ウォーキングの班が街を歩きながら行うのは、ゴミを星くずに例えた「星くず拾い」。走り終えたメンバーたちと合流すると、全員で星くず拾いを続けていきます。大型ごみの不法投棄や、街灯の電気切れ、道路の欠陥を見かけたら、自治体や警察に連絡するのも大事な役割です。警察や町会など、地元の関係者と連携しながら活動しています。

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「星くず拾い」をするウォーキング班のメンバー

ランニングを先頭で引っ張っていた渥美さんは「楽しんでやっているパトランが社会の役に立っていると思えるのがうれしいです。小さな子どもが『ありがとう』と声をかけてくれることもあります」と話してくれました。個人でも週1,2回のペースで活動しているそうです。

今回走ったのは、地元の親子連れなどから「危なそう」と声のあった場所の周辺。「チーム江東」が地元のイベントに参加した際、「防犯マップ」に危険そうな場所にシールを貼ってもらいました。そのシールが貼ってある場所の周囲を走ったそうです。

「1人で走るのは恥ずかしくても、みんなで走ればそれが力強さに変わると思います」と、渥美さんは笑顔で語っていました。

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取材当日、活動に参加したメンバーのみなさん

パトロール中は、熱中症で倒れている人や、認知症で迷子になったお年寄りを見つけて救助や通報をすることも。
地域を見守りながら走るメリットについて、「パトラン東京」代表の渡部信隆さんは「一石二鳥どころか、それ以上です。犯罪の防止、街の美化、地域の担い手の育成などが挙げられ、メンバーの健康増進もはかれます。」と言います。

「星くず拾い」は単なる清掃活動ではなく、きれいな場所では犯罪が起こりにくいという「割れ窓理論」の観点から、防犯にもつながるそうです。

「少し目線を変えて街を歩いたり走ったりするだけで、世界は全く変わって見えますし、実際に変えることもできます。自分が住んでいる街にこんな場所があったんだと気付くだけでも、毎日が楽しくなります。仕事をしながら活動しているメンバーがほとんどで、続けやすいのも魅力です。赤いビブスも用意していますので、お試しにでも参加していただきたいですね」と渡部さん。

今後は、メンバーのための環境づくりを大切にしつつ、活動を東京全域に広げ、それぞれの地域に根ざした見守りを目指していくそうです。

「わんわんパトロール」がコミュニケーションを生み、地域を守る「東京犬猫日和」

とある秋の朝。2020年からわんわんパトロールに取り組む団体「東京犬猫日和」のメンバーが、世田谷区内の公園に集まってきました。メンバーは渋谷区、新宿区、町田市、狛江市などに住んでいて、普段は地元で朝晩の好きなタイミングで活動を行い、SNSでお互いに活動を報告しています。今回は全体で集まって活動する機会にお邪魔しました。

公園にやって来たのは、計10頭の大型犬と中型犬と、その飼い主たち。「わんわんパトロール」のワッペンやお散歩バッグを、犬の首やリードに付けています。並んでパトロールする姿は圧巻で、子どもの視線もくぎ付けに。すれ違った他の犬の飼い主も「うちも参加してみようかな」と興味深そうです。

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お散歩バッグやワッペンをつけて活動する姿は地域の方々の目にとまります。

メンバーはゴミを拾いながら公園内を歩いていきます。スマホで時々写真を撮っているのは、各自のSNSで活動報告をするため。目立つような不法投棄を見つけた際は行政機関に通報したり、ゴミや放置された糞尿がある場合は東京都が提供する「防犯活動の情報投稿マップ」にも注意喚起や写真を投稿したりするそうです。

「特別なことをするわけでなく、日々の散歩の延長として活動しているので、変な使命感や義務感もなく、楽しく歩いています」と、飼い主の一人。他の方も「自分の犬のことを考える散歩から、街のことも少しだけ意識できるようになりました」と語ります。

わんわんパトロールのメリットが、すれ違った人に声を掛けやすく、向こうから話しかけられることが多いことです。「パトロールしているの、偉いねー」と会話が弾むことも度々。積極的に地域の人たちとあいさつすることが、見守りの目を広範囲に広げます。

「東京犬猫日和」のメンバーは約30人。代表の関口さんは、「犬がいることで、知らない人と声をかけあうハードルが下がります。いつ始めても、いつやめても良い、一人でもできるのがボランティア。気軽にご参加いただければ」と語ります。

実は、今回参加した犬の半分を占める5匹が、保護犬です。以前は必要以上にほえることもあり、臆病だった犬も中にはいるそうですが、飼い主の愛情のもとで心身の健康を少しずつ取り戻し、他の犬ともケンカせず仲良く歩いていました。

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「わんわんパトロール」には様々な犬種が参加していました。

元々「東京犬猫日和」は、飼育放棄された犬や虐待された動物の保護が活動のメインでした。活動10年目を区切りに新しい試みとして、わんわんパトロールをスタート。地域の安全と動物の飼育放棄は別次元の問題ではないと、関口さんは指摘します。

「台風でも犬が外に放置されていたり、飼い主の方が認知症になっていたりするケースもあります。そのようなときには、犬を連れて『わんわんパトロールです。』と声かけをすると、話を聞いてくれやすいように感じています。『犬版民生委員』として、飼い主の心をほぐし、信頼関係を築くことを第一に、人も犬も迅速に救えるように心がけています」と関口さん。

「パトラン東京」と「東京犬猫日和」では、活動の参加者を募集しています。「パトラン東京」に参加したい方は下記「団体紹介ページ」をご覧ください。「東京犬猫日和」に参加したい方は下記Instagramアカウントにお問い合わせください。

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取材当日、「わんわんパトロール」に参加したメンバーのみなさん