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調布のまちの国際イベント 一緒につくる喜び【ちょうふアートサポーターズ】

掲載日:2023.02.06

「芸術文化のまち」として知られる調布市。市内には音楽大学や映画撮影所があり、毎年多くの人を集める「調布国際音楽祭」や「映画のまち調布 シネマフェスティバル」が開催されています。

「調布国際音楽祭」は、調布市出身の音楽家・鈴木優人さんがエグゼクティブ・プロデューサーを、その父である鈴木雅明さんが監修を務めています。10回目の節目を迎えた2022年は、9日間にわたって37公演を開催。NHK交響楽団やバッハ・コレギウム・ジャパンをはじめ、ショパン国際ピアノコンクールで活躍した角野隼斗さん、小林愛実さんなど、「国際」の名にふさわしい豪華な顔ぶれがステージを盛り上げました。

こうした調布市内の文化芸術イベントを支えるのは、「ちょうふアートサポーターズ」、通称「CAS(キャス)」と呼ばれるボランティアの方々です。

実際にどんな活動をしているのでしょうか。2022年6月に開催された「調布国際音楽祭2022」の模様に密着しました。

来場者の案内から司会まで 役目はさまざま

公演の一つ、0歳から楽しめるコンサート「たたいてあそぼう」開演前の調布市グリーンホール。おそろいの黒いTシャツを着たボランティアが、多くの親子連れを迎え入れていました。ボランティアは来場者一人ひとりに丁寧に声を掛け、検温や消毒に協力してもらいます。来場者の誘導やベビーカー対応のお手伝いなど、それぞれの役割でコンサートをサポートしました。

コンサートが始まると、桐朋学園大学の学生と子どもたちが一緒に手拍子をするなど、約1時間の公演は、ボランティアのサポートもあって楽しいムードで終了しました。

来場者一人ひとりに検温するボランティア

調布駅前広場では、司会の女性が「まもなく開演いたします。もうしばらくお待ちください」とウェルカムコンサートの開始をアナウンス。音楽祭の概要や出演者の紹介を、よどみない口調で話していきます。この女性も実はボランティア。吉井さんです。

「用意頂いた原稿しか読めないんです。アドリブが利かなくて(笑)」と謙そんする吉井さんですが、無料の公演だけでなく、音楽祭の初日には大ホールで開催されたオープニング・コンサートの司会も務めるほどの腕前です。

ウェルカムコンサートを見に多くの人たちが集まりました

調布駅前広場で演奏する鈴木優人さん

広場にはストリートピアノも設置され、プロデューサーの鈴木優人さんがサプライズで登場。指揮者を務めるコンサートを前に、広場にふらっと立ち寄り演奏していました。

ちょうふアートサポーターズの活動について、鈴木さんは「街を盛り上げるという意味で、地域の方が音楽祭をつくる側に参加してくださるのが大事だと思っています。ボランティアのみなさんの活動があって、そこで出たいろんなアイディアを反映させたりして、音楽祭が10年目を迎えることができました」と語ってくれました。

鈴木優人さんが指揮者を務めた「N響×鈴木優人」©️K.Miura

大好きな音楽に貢献できる楽しみ

ウェルカムコンサートの司会を務めた吉井さん(56)は、「心惹かれるピアニストの演奏を間近で聴けたことは、今までボランティア活動を続けてきたご褒美でした」と話します。ご自身も20代まではピアノ教育に携わっていましたが、その後は音楽とは関係ない仕事に就き音楽に接する機会が減っていました。

地元の調布で音楽祭のボランティアを募集しているのを知り、2015年から参加。活動はほぼ日曜日に限られますが、会場案内やチラシ配りなどを担当してきました。「チラシの挟み込みなどの裏方の仕事も、他のメンバーと交流できるから楽しくて。出演者の方々も、『裏方がいてこそ』というのをわかってくださっています」と話します。

そう語る吉井さんにボランティアの楽しさについて聞くと、「好きなことで自分が何かの役に立てる場所、それが私にとってのボランティアです。自分が好きなことだからできる。だから、小さなことでもさせてもらって楽しいですし、そこにいる仲間と楽しく時間を過ごしたいと思えるんです」と笑顔で応えてくれました。

プロデューサー、事務局、ボランティアの距離が近いのも「調布国際音楽祭」の特徴。吉井さんは「音楽祭本番前のプロデューサーとボランティアとの顔合わせでは、直接言葉を伝えられる機会があります。また、公演日は、移動の合間に気さくに声をかけていただいたり、コロナ以前は、全公演終了後にアーティストとスタッフとのレセプションがあり、そこにも参加させていただいたりと音楽祭の一員として迎えられている気がします」と振り返ります。

ウェルカムコンサートでアナウンスする吉井さん

新しい土地で地域の人とつながるきっかけに

吉井さんとは逆に、これまで文化や芸術とはあまり縁がなくて参加した人も多くいます。音楽祭の会場で、「映画のまち調布 シネマフェスティバル2023」上映作品の人気投票を受け付けていた男性の横山さん(23)も、その一人です。

大学4年生の横山さんは、学園祭の実行委員を通じて多くの人を楽しませることにやりがいを感じ、CASに登録しました。音楽祭でのボランティアについて「お客さまが笑顔で帰っていくのを見ると、自分のやりがいになっていると感じます」と感想を話してくれました。音楽以外の分野のボランティアにも積極的に参加していきたいと言います。

「音楽の知識がなくて、他のボランティアの方々との顔合わせでは緊張しました。でも、みなさんと話してみると、年代が離れていても温かい人が多くて、とても安心しました」と横山さん。

「私のように地方から上京すると、周りに住んでいるのは全然知らない人ばかりです。ボランティアに参加することで地域の人とも交流できて、そのつながりが広がります」と、参加する楽しみが増えたことにも触れました。

人気投票の受付対応をする横山さん(右)

音楽、映画、芸術・・・幅広いジャンルで活躍

ボランティアを募集する調布市文化・コミュニティ振興財団の罍(もたい)由佳里さんは、「調布国際音楽祭」でのボランティアの役割は年々大きくなっていると話します。

ボランティアは元々、音楽祭や個々のイベントごとに募集していましたが、2020年度から「ちょうふアートサポーターズ(CAS)」として一本化されました。1年単位の登録制で随時受け付けており、イベントごとに募集メールをCASのメンバーに送信しています。

ボランティアをCASとして一本化したことで、個人情報の提出などの細かい手続きはCAS登録時のみとなり、さまざまなイベントに気軽に参加してもらえるようになりました。また、「言葉づかい」「姿勢」「ドレスコード」などのマナーをガイドブックにまとめ、研修も共通で実施しています。

「音楽祭で興味を持って入られた方が、他の映画祭などのイベントに参加されることもあります。音楽だけでなく、美術・映画・演劇など、多ジャンルで活動がありますので、どれか一つでも興味がある方は、まずは登録いただけたら」と話します。

2022年度の登録者は70人を超え、高校3年生から81歳まで。音楽祭にはそのうち59人が参加していて、公演の直接のサポートだけではなく、配布するチラシのセッティングやSNSでの情報発信なども担当しています。

「私たちの事業はアーティストはもちろんですが、スタッフやCASのみなさんがいて、一つのチームとして成り立っています。CASのみなさんは、様々な経験や知識が豊富な方も多く、こちら側が学ぶこともたくさんあります。『もっとこんな活動してみたい』という積極的なアイディアに期待しています。アイディアの内容によっては、できる活動とそうではないものがあるのは確かです。でも、CASのみなさんがやりたいことを言っていただければ、できる限りサポートさせていただきたいと思っています」と話していました。

ちょうふアートサポーターズでは、2023年度に活動するメンバーを募集しています。興味のある方は、下記「活動情報」ページをご覧ください。

調布市文化・コミュニティ振興財団の罍さん