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盲導犬は大切な仲間 あす国際盲導犬の日 社会の理解 広がって

2024.04.23
 4月最終水曜日のあす24日は国際盲導犬連盟が定める「国際盲導犬の日」。国内では11団体が盲導犬育成に取り組んでおり、「アイメイト協会」(練馬区)は最も多くの盲導犬とその使用者1451組を送り出してきた。飲食店などでは盲導犬同伴の受け入れ拒否が後を絶たず、認識不足の解消が急がれる。一般見学日に協会を訪れ、育成の様子や盲導犬と暮らす視覚障害者を取材した。

◆体験歩行で実感

 一般見学の参加者はアイマスクを着け、盲導犬と協会近くの道路を500メートルほど体験歩行した。道の左側を歩き、進む先に自転車などの障害物があると右側に迂回(うかい)した。

 小平市の会社員大坪久記さん(51)と高校2年仁美さん(16)は父娘で参加。大坪さんは「思っていたよりも歩くのが速い」、仁美さんは「盲導犬は信号機の色が分からないと初めて知った。使用者が周囲の音を判断して犬に指示しているんだと分かった」と話した。

 一緒に歩いたのはラブラドルレトリバーという犬種で、協会が育成しているのはすべてこの種類。ほかの団体でもラブラドルレトリバーが多いのは、性格が穏やかで賢いことが大きな要因だ。

 盲導犬になるための訓練は協会歩行指導部の職員が行うが、繁殖から引退後までの過程には多くのボランティアが協力している。一般家庭で約1年間育てられた犬は協会で120日間の訓練を受ける。盲導犬として働き、引退した後は一般家庭に引き取られ、ペットとして余生を過ごす。

 同部の大塚美樹さん(27)は犬の訓練や視覚障害者の歩行指導に携わって6年目。「犬の個性はさまざま。やんちゃだったり、おっとりした子も。訓練ではうまくできたら心を込めてすぐ褒めることが大事」という。指示は「ゴー(前進)」「シット(お座り)」などと英語を用いている。日本語より簡潔だからだ。

 犬の訓練と合わせて重要なのが、盲導犬使用を希望する視覚障害者の歩行指導という。希望者は4週間、協会に泊まり込んで犬とともに生活する。ペアは街中に設定したルートを総計120キロ歩く。最終ルートは中央区銀座の繁華街だ。

◆「拒否」今もなお

 杉並区内の鍼灸(しんきゅう)マッサージ業八方(はっぽう)順子さん(69)のパートナーは4匹目で、盲導犬との生活は24年目に入った。網膜色素変性症で40歳を過ぎると全盲に。「白杖(はくじょう)を使っていたが、進路を探るのは難しかった」といい、盲導犬使用を選んだ。「犬との歩行指導中に外を歩く喜びを知った」と話し、いまでは年に数回、盲導犬と一緒に沖縄へ旅行するほどだ。

 八方さんにとって「欠かせない存在」という盲導犬だが、今なお悲しい思いをすることも。3月、杉並区内で喫茶店に入ろうとしたら断られたという。「盲導犬だと説明しても店員3人とも『犬はだめ』の一点張り」。チェーン店だったため、本部に電話したら平謝りだったというが「盲導犬を知らない人がいることがショック」と語った。

◆国内第1号はシェパード

 アイメイト協会は塩屋隆男代表理事の父賢一さんが1971年に設立。賢一さんは48年から盲導犬育成を始めており、ジャーマン・シェパードのチャンピイを国産盲導犬第1号として訓練、最初の使用者河相洌(かわいきよし)さんとのペアが誕生した。

 協会は「私の愛する目の仲間」との意味を込め、盲導犬をアイメイトと呼ぶ。街中でハーネスを付けて働いている盲導犬を見かけた場合、塩屋代表理事は「犬には触らず、使用者に『お手伝いすることはありますか』と声をかけてもらえれば」と話している。

 見学日などの詳細は協会ホームページ参照。問い合わせは電03(3920)6162へ。

 文・桜井章夫/写真・佐藤哲紀

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