雲仙・普賢岳の大火砕流から34年　天国の父に届け半鐘の音

　1991年の雲仙・普賢岳の大火砕流から34年となった3日、長崎県島原市で追悼行事が開かれ、遺族や関係者らが、犠牲となった住民や消防団員、報道関係者ら43人を悼んだ。地域では災害の記憶や記録を継承する取り組みが続いている。
　3日朝、献花所が設けられた仁田団地の追悼碑前では、遺族や市民らが白菊を手向けた。
　当時、自らも消防団員で仲間を失った古川隆三郎市長は、「平穏な中でも、万が一があるかもしれないことを、今日は感じてほしい。子どもたちに災害の教訓を伝えていく必要を感じている」と語った。
　当時、学校が警戒区域に入り、一時移転を余儀なくされた島原中央高校（島原市）の生徒ら約90人も訪れ、全校生徒で折った千羽鶴を捧げた。同校では30年以上、続けているという。
　3年生の吉田来未さんは「亡くなった方が安らかにねむれるよう、一つひとつ丁寧に折った。大きな災害にあったことはないが、いつ発生するかわからないので、被災者の話から学んで、防災意識を高めていきたい」と話した。
　午後には、小学3年の時に大火砕流で避難し、土石流で自宅を失った雲仙岳災害記念館職員の長門亜矢さん（42）が体験を語った。
　自宅にいた自分を連れ出すため、母が自宅に戻ってきたことに触れ、「家族を助けるために戻って亡くなる人が多い。私も事前に集合場所などを話し合っていれば、母が危険な行動をしなくて済んだかもしれない。いざという時の連絡方法や集合場所を、家族で話し合ってください」と呼び掛けた。
　発生時刻の午後4時8分、市内にサイレンが鳴り響いた。
　消防団員12人が命を落とした北上木場農業研修所跡では、父を亡くした福岡市の会社員山下優樹さん（46）が半鐘を打ち鳴らした。「父は厳しかったけれど、野球をしたり、魚釣りをしたりという多くの思い出がある。父たちに、届けと思いながら打ったが、天国からどう見ているかも聞いてみたくなった」と話した。（菅野みゆき）
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　雲仙岳災害記念館（島原市）では3日、雲仙・普賢岳の大火砕流による被害などを記録した新聞や書籍を紹介する展示「あの時の記憶と記録を伝えたい～大火砕流惨事から34年」が開かれた。
　当時の新聞や溶岩ドームの成長の推移が描かれた図など、資料約140点が並べられた。溶岩や噴石、火山灰などを直接手に取ることができるコーナーも設けられ、来場者は重さや感触を確認していた。
　展示に携わった同館ボランティアスタッフの広瀬富美子さん（71）は当時、深江町（現・南島原市）立深江小馬場分校の教諭で、1年生を教えていた。「当時は火山灰が死の世界を思わせ、見るのがつらかった。34年が経ち、少しずつ忘れられているように思う」と振り返り、「展示を機に、いざという時の連絡方法を家族で話し合うなど、命を守る対策を考えてほしい」と話していた。