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ゴミ拾いを「カッコイイ」に。 ゆるやかな交流を通じてキレイな街づくりに貢献【特定非営利活動法人 green bird】

掲載日:2020.03.25

PROFILE

代表の福田 圭祐さん

福田 圭祐(ふくだ けいすけ)

特定非営利活動法人 green bird代表
1990年生まれ。18歳から団体の活動に参加。新卒で入社した広告会社を3年で退職し、2017年より現職。
アイディアや知見を活かし、ゴミ拾いの枠を超えた団体の新たな可能性に挑戦中。

事前の連絡や登録などは必要なし。集合場所に手ぶらで行けば参加できる、街のそうじのボランティア。特定非営利活動法人 green bird(グリーンバード)は、全国各地や海外へと活動を広げ、年間の参加者は延べ3万人にのぼります。誰でも気軽に参加できるようにした理由や仕組みづくり、組織を持続的に運営するノウハウなどについて、お話を伺いました。

参加者同士が
コミュニケーションを取りながら活動

水曜日の午前10時半。原宿駅前で待ち合わせをしていた人たちが、スポーツの練習で使うような緑のビブスを羽織りだしました。ビブスの前面には「green bird」、背面には有名企業のロゴが描かれています。彼らは、本日のグリーンバード表参道チームの参加者。作業がスタートしました。

リーダーから手袋と火ばさみ(トング) 、ゴミ袋を受け取った参加者らは、表参道方面へ向けてゆっくりと歩みを進めます。落ちているのは、タバコの吸い殻や空き缶、レシートなど。ビブス姿だと目立ちそうですが、地面に集中すると、周りの視線は意外と気にならないもの。

燃えないゴミ用の緑の袋を持った人が吸い殻を拾ったら、燃えるゴミ用のピンクの袋を持った人に声を掛けて、相手の袋にゴミを入れていきます。一人で黙々とゴミを拾うのではなく、お互いに協力していくことにより、初対面でもコミュニケーションが生まれていくのです。

半年前から毎週参加している美容師の男性は、
「さまざまな人が集まるので、いろんな出会いがあり、お互いに話すのも楽しいですね。起業している大学生とか、普段は会えないような人の話が聞けたりして。カットモデルとしてお店に来てくれる人もいました」
と話していました。

信号待ちの間には世間話をしたり、和気あいあいとした雰囲気でごみ拾いを続け、最後は喫煙所前に落ちた吸い殻を徹底的に集めました。この日に収集したゴミはいつもより少なめでしたが、普段は吸い殻だけで1000本ぐらいあるそうです。

初めて参加した高校1年生の生徒は
「学校では年に1回、ボランティアに参加しなければならない決まりがあるんです。ネットで検索してグリーンバードの活動日を調べて、入試休みを利用して参加しました。普段歩いていると全然気づかないようなゴミがあったのに驚きました」
と、感想を語っていました。

PROFILE

代表の福田 圭祐さん

福田 圭祐(ふくだ けいすけ)

特定非営利活動法人 green bird代表
1990年生まれ。18歳から団体の活動に参加。新卒で入社した広告会社を3年で退職し、2017年より現職。
アイディアや知見を活かし、ゴミ拾いの枠を超えた団体の新たな可能性に挑戦中。

「堅くてまじめ」というイメージを変えたい

2019年7月にグリーンバードの3代目代表に就任した福田圭祐さんも、11年前にインターネットで「東京」「ゴミ拾い」で検索したのが、グリーンバードを知ったきっかけ。
「大学の推薦入試の書類に、ボランティア経験の有無を書く欄があったので、何か埋めなきゃいけないと思いました。環境問題をどうにかしたいという気持ちや、高尚なボランティア精神があったわけではなかったのです 」
と、当時を振り返ります。

参加する理由は「社会にちょっとイイことをしてみたい」「地域との関わりを持ちたい」「学校の授業の一環で参加」など十人十色。いろんな属性の人たちと触れ合う中で、福田さん自身もボランティアに対する考え方が変わってきたと言います。

「僕らの活動の根源にあるのは、ポイ捨てをなくして、自分たちの街をもっとカッコイイ街にすること。地域に住む人、働いている人、学んでいる人。年齢や性別も関係なく、いろんな人が関わることのできるボランティアを目指しています。だから、ボランティアは『堅くてまじめ』というイメージを、少しでも変えていきたいと考えています」

ビブスを着て、あえて街中で目立つというのも、活動を始めた2002年からの伝統。集団でゴミを拾うことは、それを見ている人がポイ捨てをやめる抑止力にもつながります。
「ゴミ拾いをいかに面白く、カッコ良く見せるかということに、18年間ずっとこだわり続けてきました」
と福田さん。

参加のハードルを下げるために、事前登録をなくし、必要な用具を事務局で用意しているそうです。
「大事なのが、参加の理由は何でも良いことと、けっして参加を強制しないということ。『また今度来てください』という言い方はしないようにしています」

今やグリーンバードは、国内は北海道から沖縄まで計70、海外はパリやスリランカなどで計10チームが活動しています(2020年2月現在)。地域ごとにゴミの種類も違えば、チームごとに特徴があるのも魅力の一つ。無理にチームを増やすことはせず、着実に一歩ずつ活動を広げています。

SDGsの時代に、いかに共感を得るかが重要

ボランティア団体が歴史を重ねていくと、活動のマンネリ化を防いで新しい参加者の興味をどう引き付けるか、各地域のリーダーが世代交代を迎えてどう引き継いでいくか、といった新たな課題も生じてきます。福田さんは、近隣エリアのリーダー同士の意識共有を重ねるなどの新たな試みを取り入れ、持続的な組織運営に取り組んでいこうと考えています。

どんな団体も避けては通れない課題が、活動資金の調達です。グリーンバードでは収入の大半が、企業などからの協賛金や寄付金。福田さんは広告代理店に勤めていた経験を生かし、協賛金集めに奔走しています。その中で重要なのが、相手企業とのパートナーシップです。

CSR(企業の社会的責任)からSDGs(持続可能な開発目標)の時代となり、社会課題の解決にどのように貢献できるかが重視されるようになっています。企業にとっては、資金を提供して責任を果たすだけでは不十分で、どんな課題に取り組むかを明確にすることが求められているのです。

「単に『我々の活動を応援してください』とお願いするだけでは、この時代では厳しいのではないでしょうか。お互いがハッピーになるためには、なぜ企業が僕たちと手を組むのかを、世の中に説明できなければなりません。そのため、『一緒にコラボして、新しいことを世の中に起こしましょう』という形で提案をしています」
と福田さんは説明します。

提案が実った例の一つが、ラグビーワールドカップ2019™日本大会で配布されたゴミ袋。ゴミを入れて上下を結ぶとラグビーボールの形となり、観客が楽しみながら利用でき、全48試合の会場で計50万枚以上が配られました。他にも、ブームになったタピオカ専用のゴミ箱を開発して原宿に設置するなど、時代の流行に合わせた施策を展開しています。

「ワールドカップであれば、僕らがスタジアムの清掃をするのは想定の範囲内。『いいね!』とは言ってもらえるけど、世間の話題にはなりません。どうやって会場でポイ捨てを減らすかという観点で、ゴミ袋のプロジェクトを考えました。『いいね!』で終わるのではなく、皆さんが共有したり参加したりするなど、次のアクションを起こしてもらうことは、本当に共感を得なければできません」

一般の人や企業にもアピールする話題づくりは、地方のボランティア団体でも可能だと福田さんは語ります。
「グリーンバードの場合は『ゴミ拾い』×『○○○』。ゴミ拾いの活動だけを広げるのではなく、掛け算の相手を探しています。ボランティアはいろんな掛け算をすることが可能で、常にそれを意識していますね」

ボランティアを通じてコミュニティ形成に貢献

表参道での活動に参加していた女性は、
「中学生の息子が不登校になり、彼が社会とつながる場所を見つけてあげたいと思っていました」
と、参加へのきっかけを語りました。

「家族が楽しそうに参加しているのを見て、本人も自発的に行くようになって。老若男女のいろんな方々とゴミ拾いしながら話すうちに、彼の視野が広がっていったようです。学校に行けていない現状が大した問題でないことに気づき、社会に良いことをしているという自己肯定感を持つようになり、親としてもうれしかったです」

息子さんは次第に学校にも行けるようになり、高校への進学も決定したとのこと。彼女自身もグリーンバードでの人々との出会いが刺激になり、都内の他の地域の活動にも出かけるようになったそうです。

このケースは特別かもしれません。しかし、地域に根ざしたボランティア活動は新しいコミュニティ形成に貢献できると、代表の福田さんは考えています。ゴミ拾いを通じて人と人が出会い、地域のつながりが生まれていくという可能性。ボランティア活動には、街づくりの一端を担っていく力があると、福田さんは力強く話してくれました。

「少子高齢化が進む中で、町会に入る若い人も少ない状況です。まずはゴミ拾いというところから、地域と関わりを持っていただけるかなと思っていて。街に関わることが面白いと感じる人を増やしていくことが、私たちのミッションです」

特定非営利活動法人 green bird(グリーンバード)
設立:2002年
代表:福田圭祐
住所:東京都渋谷区神宮前6-35-3-732
URL:http://www.greenbird.jp/

MESSAGE 「いつでも、誰でも自由に参加できる→ボランティアの入門編 ごみ拾い=カッコイイ、オシャレ、楽しい 私たちと一緒ボランティア始めませんか?」green bird 代表 福田圭祐

MESSAGE 「いつでも、誰でも自由に参加できる→ボランティアの入門編 ごみ拾い=カッコイイ、オシャレ、楽しい 私たちと一緒ボランティア始めませんか?」green bird 代表 福田圭祐