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<ひと物語>過疎地の恵み届け20年 NPO法人ときがわ山里文化研究所理事長・柴崎光生さん

2025.04.28
 四方を深い山々に囲まれた埼玉県ときがわ町大野地区。過疎・高齢化で空き家や耕作放棄地が増え続ける中、炭焼き窯や無農薬の畑などを少しずつ整備し、特産品作りへとつなげているのが、NPO法人「ときがわ山里文化研究所」だ。同町出身で元県職員の柴崎光生さん(82)が、20年にわたり理事長を務める。

 「山里の自然環境や伝承文化を守りたい、復活させたい。その一心で、NPOを立ち上げた」と柴崎さん。趣旨に賛同した60~80代の会員約200人のうち、今も20~30人が毎週土曜に集まり、竹林間伐、草刈り、炭焼き、源流わさびづくり、茶畑などの各会に分かれ、ボランティア作業に汗を流す。収穫物の一部は持ち帰る。東京都内からの参加者も珍しくない。

 「特産品が復活したり、新たに生まれたりして、今では直売所の売り上げが活動費の4割を占めるようになった」と手応えを口にする。

 特産品のうち、無添加のわさび漬けはほんのりと甘さを感じる。無農薬・有機栽培のときがわ茶は人気商品。自生オカメササを使ったかごは抗菌性もあり、重用されているという。

 柴崎さんは地元の高校を卒業後、実家の農林業を継ぐつもりだった。だが、周囲の勧めで高校の実習助手になったことが転機となった。仕事の合間に東京都内の大学へ通うことになり、周りの教員たちがサポートに回って朝晩の仕事を免除してくれたり、朝食を用意してくれたりしたという。

 「勉強を続けることができたおかげで、その後の道筋が開けた」と感謝を込める。

 その後、県庁に入り、主に教育部門を担当。鶴ケ島市教育長も務めるなど多忙な日々だったが、故郷の町を忘れることはなく、過疎化に胸を痛めていた。定年退職後、ほどなくNPOを立ち上げた。

 20年間活動を続ける中で、県NPO大賞(2010年)や本多静六賞(18年)などを受賞した。だが、「まだやるべきことがある」と柴崎さん。「町を活性化するには、例えば特産品の販路を拡大する必要がある。専門家でない私たちにはハードルが高いし、難しい問題も出てくるだろう」

 八十路を越えたが、健康そのものだ。「毎日、無農薬野菜をいただき、山道を登り降りし、たくさんコミュニケーションを取っているからだろうか」とうなずく。

 活動の輪を広げるため、「まずは会の見学に来てほしい。ゆるやかな会なので入るも入らないも自由」と呼びかける。活動の詳細はホームページで確認できる。問い合わせは、柴崎さん=電049(285)5296=へ。(加藤木信夫)

<しばさき・みつお> ときがわ町出身。日本大法学部を卒業後、1966年に県入庁。主に教育委員会事務局で行政事務を担当。その後、鶴ケ島市教育長、県立近代美術館副館長などを歴任。退職後、2005年にときがわ町で地域活性化などを目指すNPO法人「ときがわ山里文化研究所」を設立し、理事長就任。今年、設立20周年を迎えた。