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<2025年 戦後80年>この4こま 結末は? 平和と環境を考える教材に 酒々井・一場さんら、教育者仲間が制作

2025.08.09
 80回目の「終戦の日」を前に、子どもたちへ平和と地球環境を考えさせるため、還暦を過ぎた教職経験者が連携し、学習用の4こま漫画を制作した。「絵を使えば、言葉が異なっても伝わるのではないか。ゆくゆくは世界中に発信し、地球上から争いをなくしていきたい」。発案者で千葉県・酒々井町教育委員会職員の一場郁夫さん(64)は大きな目標を抱く。(堀場達)

 制作に関わったのは、教員養成系大学の卒業生19人。きっかけは昨夏、約40年前の在学中に所属したサークル・児童文化研究会の同窓会だった。仲間は東北から四国まで全国に散らばっているが、旧交を温める中、スマートフォンアプリのLINE(ライン)で、密な情報交換をするように。

 師走に入り、一場さんが「戦後80年に向け、4こま漫画の教材を作りたい」と明かすと、助言や賛同が相次いだ。一場さんの原案に、中学校の元美術教諭で愛媛県八幡浜市の井上浩さん(65)が絵を描き、仕上げる運びとなった。

 漫画の筋立ては(1)荒れ果てた故郷の星を脱出し、移住の場を探す宇宙人(2)美しい地球を見つけ、宇宙船の中で喜ぶ(3)しかし、地球の各地で戦火と環境破壊の煙が上がり、人々や生物が涙を流しているのが見える(4)宇宙人は落胆し、地球から立ち去る。

 井上さんは「4こま漫画は起承転結があり、私も授業で使ったことがある。作品の筋立てからは、今のまま戦争や環境破壊を続ければ、地球はだめになるという問題意識が子どもに芽生えていく」と、協力を快諾した理由を話す。

 作品に登場人物のセリフはなく、未完成のままにしている。セリフを子どもたちに書き込ませるなどし、戦争や環境問題を考えさせる狙いがあるためだ。

 作品を教育現場で活用し、留意点や改善点を報告してくる仲間も。宮城県登米市の小学校で指導している小野寺由子さん(64)は同僚の協力を得て2、4、6年生にセリフや感想を書いてもらった。「『戦争をなくすのは大人の仕事と思っていたが、自分たちも何かできる』と考えた6年生もいて、成長を感じた」

 埼玉県加須市で独居老人を支援するボランティアグループの代表を務める宮本恵美子さん(63)は、高齢者に作品の感想を聞いて回っている。

 一場さんは「当初は酒々井町での試みと考えていたが、仲間の好意的な反応で、広がりがあると気付いた。4こま漫画は、子ども、お年寄りにも受け入れられやすい。まず、どう活用していくかを含めた学習プログラムを作る。図書館での展示や、教科書への採用をはたらきかける活動もしていきたい」と意欲的だ。