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古民家、交流人口創出の拠点に 「コミュニティデザイン」代表理事

2025.09.14
 兵庫県姫路市から中国山地を横断していた出雲街道の宿場町・城下町として栄えた勝山(岡山県真庭市)。武家屋敷に土蔵、白壁……。ノスタルジックな町並み保存地区で、江戸期に地方役人らが利用する宿だったという古民家が、交流人口の創出などを目指す施設に今春、生まれ変わった。運営する一般社団法人「コミュニティデザイン」で代表理事を務める真庭市の松尾敏正さん(49)。
 古民家の名称は、勝山藩の立藩した年にちなむ「郷宿(ごうやど)1764」。のれんをくぐると、パソコンのキーをたたいたり勉強したりと若者らが思い思いに楽しむ姿でにぎわっていた。地元の会合で若者が集う場所などを求める意見を聞き、市にかけあって実現した。
 同市出身。小学生当時、親の仕事の関係で大阪へ移り、府立高卒業後は飲食業へ。食や地方創生に関わる会社の役員に就き、関連のレストランを経営。JR大阪駅前の複合商業施設「グランフロント大阪」の開発にも取り組んだ。各地を飛び回る多忙さに、「ライフスタイルを見直し、家族との時間に重きを置きたい」と一念発起。2014年に一家で帰郷した。
 同年、まちづくりに携わった経験を生かして初代の市地域おこし協力隊リーダーになり、地域の課題解決を目指す「コミュニティデザイン」を16年に立ち上げた。移住相談に乗る市交流定住センターを受託運営。総務省の地域おこし協力隊アドバイザーを務める。妻と営むカフェ「Nostalgie Cafe ろまん亭」には人々が自然と集う。
 アイデアはよどみがない。廃校舎の滞在型交流施設への改修、キャンプ場での持続的な雇用、商店や生産者団体によるマーケットの企画……。発展的解消の成功例があり、後進に託すのも身上だ。9月下旬には、脱炭素をテーマにした「真庭万博」を催すなど活動の幅は実に広い。
 地方の暮らしの豊かさに多くの人の回帰を、と願う。「緩やかに過ぎる時間。お金に追われず人生を楽しめる」
 移住、定住で大事な点は「地域の人とつながってもらうこと。知り合ってください。マッチングをするのが我々の仕事」と強調。そして「スキルは地方でも学べる。なりたい自分になる自己実現を支えたい」とも。豊かな経験に基づく真摯(しんし)な思いが口を突く。(藤井匠)
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 〈郷宿1764〉シェアハウス、コワーキングスペース、一般市民らに開放するチャレンジキッチンを備える。江戸期の建築という木造2階建てで、ボランティアの協力で半年かけて改修。町並み保存地区の中町観光駐車場に隣接。問い合わせは市交流定住センター(0867・44・1031)。