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子どもたちに「外国との出会い」をプレゼント 学校と大使館をつなぐボランティア

掲載日:2023.04.13

日本に移り住む外国人が増える一方で、交流の機会はあまり多くはありません。そんな中、未来を担う子どもたちに国際交流の機会を提供しようと活動しているのが、特定非営利活動法人(NPO)の「CMC」です。各国の駐日大使館と連携して、小中学校などで国際交流イベントを開催しています。2023年1月に世田谷区立京西小学校で開かれた、メキシコ大使館との交流イベントの模様を取材しました。

メキシコの文化を体験、大使館と小学校の交流イベント

「タコスを食べたことある人~?」

メキシコ大使館の職員が質問を投げかけると、子どもたちは手を挙げたり、「おいしかった!」と答えたりしています。スクリーンに映し出されているのは、メキシコの食の基本でもあるトルティージャや料理の写真です。大使館員が児童と会話のキャッチボールをしながら、メキシコ原産の農作物や世界遺産、あいさつの言葉などを紹介していきます。

代表の子どもたちが前に出て、スペイン語のあいさつを練習しました

今回のイベントは、京西小学校の体育館に3・4・5年生を学年ごとに集めて開催されました。95分間を使って、歌あり、ダンスあり、民族衣装の試着体験ありと盛りだくさん。この時間は4年生の3クラス約100人が元気いっぱいに楽しんでいました。

大使館がイベントのために作ったスライドを操作したり、会場の設営をしたりしている大人は、CMCの活動にボランティアとして参加している個人や企業のサポーター。イベント進行のアシスト、機材のセッティング、撮影など、約20人のサポーターはさまざまな役割をこなしています。

CMCとは「Children Meet Countries」の略。さまざまな国の駐日大使館と子どもたちが学校で交流する「CMCプロジェクト」が主要な活動です。2014年にプロジェクトがスタートし、これまでに70以上の国・地域と、延べ200校で2万人以上の子どもたちが参加しています。

クイズ大会では回答のボードを掲げ、子どもたちを誘導するのがサポーターの重要な役割です

体育館では、クイズ大会がスタートしました。「メキシコの広さは日本の何倍?」「メキシコの小学校にも給食がある?」などの問題が出され、回答の「A」「B」などのボードを持ったボランティアの周りに子どもたちが集まっていきます。正解が発表されると、ジャンプして喜びを爆発させる子も。

イベントの後半にはサプライズゲストが出演しました。メキシコ音楽の楽団であるマリアッチと、カラフルな衣装を着たメキシコダンスのグループが後方から登場して、体育館は一気に華やかな雰囲気に。

ダンスグループによるレッスンがスタート。独特のステップを丁寧に教えてもらった子どもたちは、すぐに踊りをマスターします。CMCのボランティアも手拍子でサポートして、会場が一体となり盛り上がっていました。

ダンス体験で会場は一体感に包まれていました

4年生からのお返しは、日本で人気のダンスをみんなで披露。「メキシコの文化や踊りを教えてもらってありがとうございました」「ダンスを踊るのが楽しかったです」と、お礼の言葉を送っていました。

大使館の外交官は「メキシコと日本の外交は今年で135周年。これからもメキシコと日本の関係が、ずっと仲良く続けばうれしいなと思っています」と子どもたちにメッセージを送り、笑顔にあふれたイベントは終了。その後も大使館員は学校を見学したり、給食を体験したりして、交流を深めていました。

年齢や活動時間帯を問わず、さまざまな役割でボランティアが活躍

国際交流イベントを支えるCMCのサポーターは、幅広い年代で構成されています。クイズ大会の回答のボードを掲げたり、民族衣装の試着を手伝っていたりした岸千都子さんは取材当時71歳。孫と同世代の小学生と接して、「これからの子どもたちが生きるのは、いい世界であってほしいという思いがいつも胸にあります。外国人を抵抗なく受け入れる社会になっていくのではないでしょうか」と語ります。

民族衣装の試着を手伝うサポーターの岸千都子さん(左手前)

定年退職後に知り合いから誘われ、CMCに参加して6年以上経つという岸さん。活動のだいご味は、小学校と大使館という2つの世界を同時に見られることだそうです。「大使館の方々は、自分の国を知ってほしいという熱意を持った方ばかりです。私も知らなかった話を聞けて好奇心が高まりますし、英会話を習うモチベーションになります」と言います。

岸さんと50歳離れた菱川怜菜さんは大学4年生。父親の仕事の都合で中学3年間をスペインで過ごし、帰国後に国際交流のボランティアをネットで探していたら、CMCにたどり着きました。

菱川さんの得意分野が、語学力を生かした通訳です。イベント開催前には大使館とのメールの翻訳を務め、今回のイベント当日はマリアッチらゲストをスペイン語で案内しました。インスタグラムに投稿する写真の撮影や加工なども任されています。

得意のスペイン語をいかして、出演者と打ち合わせをする菱川怜菜さん(右手前)

「学生が興味のあることに挑戦できる機会は限られていますが、CMCのボランティアは自発的な活動なので、さまざまなことにチャレンジできます。私自身もやりたいことや興味が広がりました」と菱川さん。4月からの勤務先では、子どもに関連した業務を担当したいそうです。

イベント開催日のほかにも、打ち合わせやリサーチ、備品の準備、参加した子どもたちの感想を抜粋した「提言集」の編集制作など、サポーターは普段からさまざまな活動を行っています。菱川さんも、大学卒業後は平日のイベントへの参加が難しくなりますが、裏方として手伝っていきたいと考えているそうです。

イベントで大活躍した岸さん(左)と菱川さん

子どもたちが世界に目を向け、各国の人々と課題を解決していくきっかけを

CMCプロジェクトのアイデアを考案し、大使館や教育委員会などと交渉を重ねた結果、ゼロから国際交流イベントの開催を実現させたのが、CMC理事長の岡田珠紀さんです。

「子どもが外国の人々や文化と接する機会を持つことで、世界に目を向けて、『どこでも活躍できる場所はあり、世界の人々と共に課題を解決できる』と考えるきっかけを作れたら」という思いで活動を始めて8年余り。

CMCの活動の魅力について、岡田さんは「たくさんの国々や子どもとふれあい、みんなの笑顔をつくること。そして交流した学校・大使館双方から感謝されること」と説明します。イベントに参加したサポーターからは「子どもたちと一緒に学べて楽しかった」「たくさんの笑顔にふれて元気をもらえた」「この経験が将来子どもたちの役に立つだろうと感じた」などの感想が寄せられています。

学校でのイベントは基本的に平日ですが、小学生と外国人留学生が交流するイベント「Show & Tell」は土日にも開催。自分の働き方や個性、希望に合わせて多様な参加のスタイルがあるのも、CMCのボランティアの特徴です。

CMCでは、ボランティアを随時募集しています。
「一緒に楽しみながら、子どもたちに素敵な交流の機会を作る活動です。外国語を話せるかどうかはまったく問題ありません。みなさんの登録やお問い合わせをお待ちしています。」
興味のある方は、下記「活動情報」ページをご覧ください。

CMCの活動の魅力について語る理事長の岡田珠紀さん